俗なことは嫌いと俗っぽく言ってみる
思っていることを活字にすることでなにかが変わるんじゃないかと期待を込めて書いてみたり時にただの愚痴だったりするブログ。
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『20世紀をつくった経済学』根井雅弘
『20世紀をつくった経済学 シュンペーター、ハイエク、ケインズ』根井雅弘、2011、ちくまプリマー新書

おもしろかったですー。
うすいし、文章も読みやすいけど、

20世紀の歴史・社会経済状況と、それに対峙する経済学(者)の大きな流れ本書全体に通じていて、
感覚的には小窓から広い外を眺めているような気分になりました。

そして、上記のような大きな流れを踏まえつつ、
20世紀の社会に対峙した経済学者としてシュンペーター、ハイエク、ケインズの3人に焦点を当てています。

でも、彼ら3人の学説をただ並べただけではありません。
シュンペーター、ハイエク、ケインズのそれぞれのバックグランド(思索の根源)、
彼らも影響を受けたであろう同時代に生きた人びと(哲学者など)の思索、
そして3人のやりとりも、端的に描かれています。
(なので、実際には表題にある3人以外に、多くの経済学者・哲学者などについてふれられています)

このように幅広く、かつ端的に描いてくれるのは、この著者ならではだと思っています。
(幅が広すぎて、時に批判がでるのも仕方がないのかもしれません)


一般の経済学史の本のように、経済学という学問上の貢献(誰それが何という概念を発見したなど…)を挙げ連ねているものではなく、
各経済学者の思索の道筋をたどる為よりつっこんで書かれている部分もあるので、経済学入門という感じではないなぁと思いました。ジュニア(って何才くらい?)にどこまで伝わるか…むしろ教科書的な/通俗的な経済学の認識でガチガチになっている人に読んでほしいですねー。

経済学を全く知らない人は、3人の経済学者のことをウィキペディアでいいので(笑)さっと調べてから読まないと、逆につかみにくいかもしれません。


もちろん、普通に経済学の本として読んでも、私としては初めて気づかされる部分も多くあり、勉強になりました。
20世紀という時代に大きな影響を持った「社会主義」についても、
ベルリンの壁崩壊以降の私たちの世代にはその影響力がイメージしにくいですが、そんな私たち世代の視点に立って解説してくれているのはありがたいです。

でもそれ以上に、経済学を学ぶ人以外でも汲みとってほしいのは、「ものの考え方」です。


「ものの考え方」、具体的に言えば、ある学説の解釈、ないしは日々ニュースや新聞を通して一般に流布している言説を、いかに解釈するかといったこと。
ある学説・言説を、表面上だけさらってきて、「きっとこれはこういうことだろう!」「かの有名な○○はこのように言っているのだから、私の考えは正しい!」と軽率に考える人が案外多いのでは。(自戒を込めて。)
本書で捉えられているように、経済学者で言えば、経済学上の貢献だけでなく、
その経済学者の経済学説以外における思想、それを生み出している時代背景・同時代に生きた無数の知識人との交流…などなどを見ていって、

その経済学者は何を前提としていて、自身の提唱する経済学説を通して何を目指しているのか。

発せられた「言葉」一つとってしても、それがどのような意味で用いられているのか。


そんなことも考えていかねばなりませんし、それを考えてゆく為の思考訓練としても、本書は使えるのかもしれません。


この幅広い視野から物事を捉える必要性は、本書では何度も指摘されている、「原理主義に陥る事の危険性」に通じると思います。
本書も、著者がこの危険性を広く伝える為に書いた著作の1つなのだと思います。



でも少し気になったこと。本の帯の「資本主義はどうなるのか」とか裏表紙の「資本主義の本質を求めて」という言葉、これはどうなんだろう?と思いました。

まずこれら表現ってけっこう使い古されていて、その割にはきちんと資本主義の本質を説いた本なんてなかなかなくて、見た瞬間胡散臭いと感じてしまう(笑)

確かに1章では、資本主義の本質を探ろうとしたシュンペーターが描かれていますが、
むしろ本書全体では、「20世紀は資本主義も社会主義も、両者を多少修正した立場も色々あったよ」という事が、それぞれの主義主張をしている沢山の人びとの葛藤を通して、示されているように読めました。

その「色々」というのは、単なる無機質な学説ではなく、どの学説が勝っただの負けただののレベルでなく、20世紀という時代の中で理想の社会を築く最善の策を模索する中で生まれたものであった…という感覚は、常に大事にしていきたいですね。


【つっこんだ部分で勉強になった/多くの人に知ってほしい点メモ】
・若き日のシュンペーターにとってワルラスは、「経済分析」の方法としては当時最高水準だったが、資本主義の本質を捉えていないように思えた。

・ハイエクの真の個人主義、偽の個人主義…
・ハイエクの自生的秩序
・ハイエクの「自由主義」の解釈について…単なる自由競争ではない!

・ハイエクの社会主義批判…単に「国民みんなの重要を1つの国家が管理するのは現実的に無理だよ!」と述べているレベルのものでなく、
 「自分の需要を必ずしもすべて人に伝えることはできないのだから、社会主義は理論的に無理だよ!」と言っている。

・ハイエクは「便宜」よりも「抽象的な正義」を優先しすぎていた?(p.99)

・シュンペーターもケインズも、敷衍化すれば相互補完する事を述べている。

・ワルラスも独自の意味で社会主義者(p.50)⇒あー調べなきゃと思ってたところ…。ワルラスはアソシエーションも重視しているので。

・ケインズ以前の「古典派」経済学者
…失業者を労働市場の問題としてしか捉えていなかった。(そこでは非自発的失業でなく自発的失業しか 考えられていなかった→でもケインズの時代、目の前の失業が大量すぎた!?→非自発的失業を財市場で捉える。(p.85-88)
⇒この頃の「失業」の状態について再確認。失業、ないし貧民に対する社会的な取り扱いについてはポランニーも触れているので、それを踏まえて確認。


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